【コラムPTOT29】認知的徒弟制(Cognitive Apprenticeship)
学生さんを指導していると、
「もっと自分で考えなさい。」
と言いたくなる場面があります。
もちろん、自分で考える力は大切です。
しかし、最近あらためて感じるのは、
考える力がまだ十分に身についていない学生に、「考えなさい」だけを求めても、なかなか前には進めない
ということです。
例えば、実習で担当している症例について考察するとき。
経験のある理学療法士であれば、
「この姿勢なら○○が原因かもしれない。」
「他にも△△という可能性もある。」
「それを確認するには、この評価が必要だ。」
というように、頭の中で自然に考えが組み立てられます。
しかし学生さんは、その「考え方」そのものをまだ知りません。
だから、
「どう考えればいいのか分かりません。」
という状態になってしまいます。
このような学びの方法として、教育学には「認知的徒弟制(Cognitive Apprenticeship)」という考え方があります。
簡単に言えば、
熟練者が、自分の頭の中でどのように考えているかを、言葉にして見せる教育方法
です。
例えば、
「私は今、この情報を見てこう考えた。」
「でも、別の可能性もある。」
「だから、この評価を追加しよう。」
と、答えだけではなく、思考のプロセスそのものを見せていきます。
学生さんは、その考え方を真似しながら少しずつ身につけていきます。
これはスポーツにも似ています。
野球で「自分でフォームを考えなさい」と言われても、初心者は困ります。
まずは上手な選手のフォームを見て、真似をする。
そこから、自分なりのフォームができていきます。
臨床推論も同じです。
最初は、指導者の考え方を真似するところから始まります。
そして、何度も繰り返すうちに、
「先生ならどう考えるだろう。」
が、
「私はこう考える。」
へと変わっていきます。
自分で考える力は、何もないところから突然生まれるものではありません。
まずは「考え方の型」を学び、それを真似し、繰り返し使うこと。
その積み重ねが、本当の意味で「自分で考えられる人」を育てるのだと思います。
